
前回ご紹介した「未利用木材活用トライアル事業」が、2024年3月をもって無事に完了しました。今回の事業では、以下の2つの観点から実証試験を行いましたので、その取り組みの一部をご紹介させて頂きます!
(ア) 架線系集材により林地残材の集積コストを削減し、事業性を成り立たせることができるか? (イ) 嵩高で輸送効率の悪い未利用木材を山の中で破砕・減容することで輸送コストを削減し、事業性を成り立たせることができるか?
以下、それぞれについて詳しく説明します。
(ア)に関して、通常広く行われている「車両系集材」という集材方法では、伐採された樹木は林内で枝を切り落とし、利用価値のある幹材だけを林外に搬出します。したがって、通常は搬出されなかった枝条などの未利用木材が林床に散在しています。
これらの未利用木材を林地から搬出するには、グラップルやフォワーダーなどの重機を使用して、林道近くまで集積する必要がありますが、これには非常に多くの労力が必要でありコストがかかります。
一方、車両系集材とは異なる集材方法に、「架線系集材」という方法があります。架線系集材では、林道付近から林内に向かってワイヤーを張り、伐採した樹木を枝払いをせずにそのままワイヤーで吊るして1か所に集めます。その後、枝を払い、幹材を造材するため、車両系集材と比較して未利用木材が1か所に集まっており、これを集積する手間が省かれます。

さらに、植林の際には「地拵え」と呼ばれる作業が必要になりますが、このとき、散在した未利用木材を片付ける手間がかかりますが、架線系集材では未利用木材が既に1か所に集まっているため、この地拵えの労力も削減できます。
ただし、通常は架線系集材の方が集材コストが高額になりますが、これまで捨てられていた未利用木材を効率的に集積し、売却すること、さらには地拵えコストを削減することで、トータルの事業性を検証しました。結果として、いくつかの前提条件はありますが、最大限に未利用木材を搬出し、効率的に需要地まで運搬することができれば、架線系集材の割高な集積コストを吸収し、事業として成立する可能性が示唆されました。
(イ)に関して、「嵩比重」という言葉をご存知でしょうか?これは、単位体積の対象物質の質量を表し、水の嵩比重は1.0g/cm³です。 未利用木材である枝などは、枝と枝の間に多くの空隙があり、嵩比重が非常に小さいのが課題です。トラックで輸送できる未利用木材の重量は、同じ体積の水を輸送した場合の約7分の1程度になり、その分、単位重量あたりの輸送コストが高くなってしまいます。

今回の実証事業では、写真のような小型の移動式チッパーを使用して、山に近い場所で未利用木材を破砕することで、嵩比重を約2倍に高めることに成功しました。もちろん、移動式チッパーの設備コストが追加でかかることや、トラブルなく稼働させるオペレーションの構築、山までのアクセスなど、まだまだ事業として成立させるための課題はありますが、未利用木材の輸送コストを削減できる可能性が示唆されました。

このように、未利用木材の活用にはまだまだ乗り越えなければならない課題がありますが、使われずに放置され、ともすれば植林作業の妨げにもなっている未利用木材を活用し、地産地消の再生可能エネルギーに変換する未来を目指して、これからもさまざまなトライアルを続けていきますので、引き続きご期待ください!